スターライトドリームはデジタル投影の先駆け?

プロジェクターを使ったモバイルプラネタリウム製品がほとんどなかった頃のお話。
ピンホール式の自作プラネタリウム投影機と小さなエアドームで出張上映をする傍ら、実はビデオプロジェクターと自作アプリを使った天井投影をしていた時期がありました。それが、アプリケーションのページでも紹介している「スターライトドリーム」です。もうずいぶん前にサービスの提供を終えていますが、当時こういったサービスをやる業者がほとんどなかったので、いろいろな場所でたくさんご利用いただきました。
今回は、そんな懐かしいスターライトドリーム開発の思い出を少しだけ話そうと思います。

きっかけは結婚披露宴

「やっぱりドームじゃないと星空を映せないですかね?」

たしか、発端はそんな電話だったと思います。2006年ころの話です。
電話の相手は、とあるウェディング企画会社の社長さん。新郎新婦がどうしても披露宴でプラネタリウムをしたいとのことでした。
ミラーボールやレーザー演出で星空の雰囲気を作ることは当時もされていたようですが、そのときのリクエストは、
「プロポーズの日の星空を頭の上に再現したい」
これをなんとか叶えてあげたいが、お宅でどうにかならないか?と。

もちろん披露宴の会場に小さなエアドームを設置するわけにはいきません。
そうなると、プロジェクターで天井に投影するしかない。しかも、できるだけ大きく。
しかし、そんなノウハウもないし、機材もアプリもない。
でも、その社長さんと話しているうちに、「なんとかしましょう!」と熱く請け負ってしまったのでした。


そこからがもう大変。
まずはプロジェクター。これがないと話にならないけど、高価で買うことはできません。
業務用プロジェクターのレンタルサービス業者さんを何カ所も探して事情を説明しました。1か所だけ、無理な相談に乗ってくれたかたがいて、格安でプロジェクター借してくれました。本当にありがたかった。

それから、映像を拡大するためのレンズを調べて中古品を購入し、それを保持する簡単なフレームを自作し、そして投影用アプリを大急ぎで開発しました。
とりあえず、「プロポーズの日」の星空をちゃんと投影できればいい。
必要最低限の機能を持たせたスターライトドリームのバージョン0.01β(そのときは名前すら無かった)は、そんな状況の中で生まれたのでした。

投影の方法

スターライトドリームのセッティングはいたって簡単。プロジェクターの投射光を拡大レンズで大きくして、鏡で天井に向けて投影するだけです。
機材のセッティングや試写調整に時間を割いてもらえない現場で、どうしたら短時間で準備できるか。その試行錯誤の末に生まれたのは、究極にシンプルなツールでした。

下のギャラリー写真は、実際の結婚披露宴会場に設置されたスターライトドリームの機材と、投影チェックの様子です。


プラネタリウムじゃないプラネタリウム

スターライトドリームは、その後いろいろな要望を反映させてバージョン2.99まで進化しました。
普通のプラネタリウムではありえない演出機能もたくさん追加しました。
例えば、星空をカラーイルミネーションや花束、雪の結晶などのリングで飾ってしまうとか、好きなタイミングで流れ星を飛ばせるとか、思い出の写真を表示できるとか。
「プラネタリウムとは惑星(プラネット)の運行を正確に表現し、云々かんぬん…」というアカデミックな定義でいえば、スターライトドリームはプラネタリウムではなかったかもしれません。でも、投影された星空を見た人はみんな「素敵なプラネタリウム」と喜んでくれました。
業界にどっぷりつかって仕事をしてきた私のカタいアタマでは到底思いつかないような星空の需要。それに気づかせてくれたのがスターライトドリームでした。

スターライトドリーム演出

スターライトドリームがもたらしたもの

スターライトドリームは2006年から約10年間サービスを提供して、いろいろな場所で数多くの星空を演出をしました。
ときには「こんなところで星空を映すの??」なんていう場所もあり、いい意味で既成概念を崩してくれることもしばしばでした。

  • 結婚式/披露宴/婚活パーティ/葬儀
  • 新車発表会アンベール/講演会
  • イベントホール/コンサートホール/ライブハウス/ビアホール
  • ホテル/レストラン/ショッピングモール/バー
  • テーマパーク/アミューズメント施設
  • 駅施設/空港施設/高速道路トンネル
  • 水族館/美術館/科学館/図書館/映画館/天文台
  • 保育園/幼稚園/小中高校/大学
  • 住宅展示場/病院/各種施設/個人宅

「プラネタリウムじゃないプラネタリウム」スターライトドリームの開発、そして全国で投影した経験は、すべて現在につながっています。
結局私は、2.99で止まったスターライトドリームの新しいバージョンを今も作り続けているのかもしれません。
「スターライトドリーム」って名前、また使おうかな。悪くない名前でしょ?(笑)

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