今から20年以上も前、自作ピンホールプラネタリウム投影機を完成させて出張上映事業を始めたときは、ドームいっぱいに星が映るだけでとてもうれしかったことを憶えています。しかし、少し経つと「もう少しきれいな星にならないか」という欲求が大きくなり、投影フィルムの印刷や光源ランプの選定など、いろいろと改善を続けてきました。
そうこうしているうちに、小型で持ち運びできるデジタルプラネタリウム投影機が台頭してきました。初めてその投影を見たときの感動と興奮は今でもはっきりと憶えています。太陽が頭上をめぐり、リアルな朝夕焼けが再現でき、色のついた星々がまたたき、流れ星も飛ぶ。たしか最初はXGAかSXGAくらいの解像度で明るさも相当暗くてフォーカスも甘い画質だったと思いますが、もうこれで十分じゃん!と思ったものでした。
しかし、それも少し経つと「もう少しきれいな星にならないか」という欲求が大きくなってきます。
輸入製品を借りて運用している限りは何も手を加えることができず、それ以上の画質向上は見込めません。結果、ついにデジタルプラネタリウム投影機も自作してしまいました。それが現在のソラプロジェクターです。
ソラプロジェクターの開発では、いろいろなプロジェクターやレンズを取り寄せて試行錯誤を繰り返しました。
そして、ようやくフルハイビジョン解像度で明るくきれいな投影ができるシステムが完成したのです。
しかし、それも少し経つと「もう少しきれいな星にならないか」という欲求が大きくなっています。
創業20周年の今年、さらに明るいプロジェクターや高性能レンズを使った新型ソラプロジェクターが完成しました。FHDはもちろん、WUXGAやWQHD、さらに4Kまで対応可能で、格段に明るくフォーカスの合った映像を投影できるモデルです。科学館などの大型施設の常設システムと違い、可搬性や収納性、製作コストなど、移動プラネタリウムには求められる仕様や制限がいろいろあるのですが、その範疇の中では自分史上最高の投影システムができたと自負しています。
しかし…
最高の投影システム=最高の星空 とはいきません。
星空画質の向上には、生成側であるPCにも高いスペックが必要なのです。
明るくシャープな投影を得られて初めて、星のまたたきが不自然な点滅に見えること、朝夕焼けの空の色変化が粗いこと(階調再現や弱い)ことなどが顕著になってきます。
これは正直盲点でした。
たとえば同じ解像度の星空でも、ビジネス向けノートや小型PCで出力するのと、グラボを積んだ比較的高いスペックのPCで出力するのとでは、明らかに投影品質に違いが現れます。リフレッシュレートの差が大きいようです。
ゲーミングPCはゲーマーだけのものという先入観があったのですが、よくよく考えてみれば、リアルな星空や宇宙を描画するのは高画質のゲーム映像処理に似た部分が多くあります。ピクセル単位の点像表現である星のまたたきなどは、その最たるものとも言えます。
ということで、
「重くてでかいPCを出張上映に持ち歩くのはもう面倒」
「軽さこそ正義!」
とか言って安易に投影用PC環境を整備してきた己を恨みつつ、持っているものでどこまでチューニングできるか、それともゲーミングノートPCの導入に踏み込むか、悩んでいる私なのでした。
星空画質の追求と、それにともなう痛い出費は、まだまだ続きそうです…