「マイコンの画面に星空を描きたい」
私がプログラミングを学ぶようになったのは、まさにこれがやりたかったからでした。
これは、遠い昔のアプリ開発の始まりのお話です。
はじめてパソコンに触れたのは中学生のとき。当時は「マイコン」と呼ばれていて、起動するとプログラミング言語BASICの真っ黒い画面があらわれるだけの機械でした。こんなふうに、四角いカーソルがチカチカ点滅してコマンド入力を待っているだけ。
OK
■
OKと言われてもねえ…
40年以上前に発売されたパソコンは、今みたいにインストールしたアプリを使うのではなく、まずアプリ自体をプログラミングすることを静かに強制されるという、なんとも高圧的でマニアックな機械だったのです。もちろんWindowsやmacOSのようなグラフィカルな画面もなく、インターネットもなかった時代です。
NHK教育(いまのEテレ)では、「マイコン講座」というBASICのプログラミングを学ぶ強要、違う、教養番組も放送されていましたが、はたしてどれだけの人がプログラミングできるようになったのだろう…。
当時は、週末になるとデパートに展示してあったパソコンの前に陣取って「マイコン講座」テキストに掲載されていたプログラムを打ち込んで遊んでいました。いま思えば迷惑な客ですが、とても高価で買えるはずもなく、そうやって少しずつBASICを覚えていったのでした。たしか最初に自分で作ったプログラムは「日の入りのCG」だったと思います。こんな感じだったかな。NECから発売されたパソコンPC-8001に搭載されていた、N-BASICというプログラミング言語です。CONSOLE 0,25,0,1:WIDTH 40,25
FOR I=0 TO 40
LOCATE I,INT(I/2):COLOR 2:PRINT "●";
FOR T=0 TO 10000:NEXT T
PRINT " ";
NEXT I
COLOR 7
END
「RUN」とコマンドを打って実行すると、太陽(●)が画面左上から右下にゆっくり動いていくだけのプログラムです。たぶんこれで動いたはずだけど、とてもとてもCGとは呼べないレベルですね。
そんなころ、1冊の本に出会います。その名も「マイコン宇宙講座」。
当時パソコンで星空を描きたいと思った人で、この本を知らない人はきっといないでしょう。
●を動かすだけで精いっぱいだった中学生にはほとんど理解できない内容でしたが、とにかく数学やBASICを学べば、プラネタリウムや太陽系シミュレーションなど、いろいろなプログラムが作れるということだけはわかりました。
もう絶版ですが、この本はプラネタリウムアプリ開発のバイブルとしていまも私の本棚に並んでいます。
いまはパソコンの演算やグラフィックス性能が格段に上がって、まさに隔世の感がありますが、アプリの基本的な部分はこの本に書いてあることと実はぜんぜん変わっていなかったりします。
その後、親に無理を言ってパソコンを買ってもらい、さらにBASICプログラミングにハマっていったのですが、星空を描画できるようになったのは、それから10年以上も先の、また別のお話です。