先日、ソラプロジェクター33号機をクライアントにお届けして、2022年の投影システム製作がすべて終わりました。
通算33機、振り返ってみれば、ずいぶんたくさんのシステムを製作したものです。
そのデジタルプラネタリウム投影システム、性能の核となるのは、なんといってもプロジェクター。
プロジェクターの性能で投影品質のほとんどが決まるといってもいいでしょう。
では、どんな機種を選べばいいのか?
最近では、DLP方式や3LCD方式、手のひらに乗るお手軽なサイズから大型高輝度のものまで、プロジェクターは実に多彩なラインアップです。プラネタリウム施設でプロジェクターが利用されだした頃を知る私としては、隔世の感すらあります。当時は、ブラウン管とレンズのセットがRGB分3本ついた、まるで戦艦の主砲のような巨大な3管式プロジェクターが全盛でした。技術の進歩は本当にすごいです・・
ソラプロジェクターの開発にあたっては、プロジェクターの選定にかなり時間をかけました。レンタルできるものはレンタルし、中古で買えるものは実験用に購入して、できるだけ実機に触るようにしたのです。すると、スペックだけではわからない投影の実際や使い勝手も見えてきます。
まず、モバイルプラネタリウムでは持ち運びが前提ですので、10㎏を超えるような大型のものはハンドリングがたいへんです。かといって、部屋の天井に投影できる程度のものではスペック的に物足りない。でも高価すぎるものは手が出ない。なるべく軽く、それでいて映像の品質が高く、高価すぎないもの。この相反する要求に合う機種を選ぶ必要があります。
ということで、ソラプロジェクター標準モデルのプロジェクターとして採用しているのは、EPSONのEH-TWシリーズ。
ソラプロジェクターの試作や初号機以来、ずっとこのモデルを使っています。EH-TW6600→6700→7100と後継機種が出ていますが、ずっとこのシリーズです。
エプソンホームプロジェクター EPSON EH-TW7100
この機種は、上に書いたリクエストにバランスよく応えてくれるものです。
明るさは3000ANSIルーメン。4mから7mくらいのエアドームで使うには十分な明るさです。そして特質すべきは高いコントラスト比です。
プロジェクターのスペックというと明るさばかりに目がいってしまい、そのカタログ数値で判断されがちなのですが、特にプラネタリウムの星空投影で必要なのはコントラスト比の高さです。要するに「どれだけ黒が黒く引き締まって見えるか」ということ。いくら全白ルーメンの値が高くても、コントラスト比が低ければ投影される星空は白っぽくなってしまいます。黒の再現性、そしてカラーのきれいな発色、これこそがデジタルプラネタリウム用のプロジェクターに求められるとても大事な性能なのです。
そしてもうひとつ大事なこと。それがデフォルト投射角度とレンズシフト機能です。
たいがいのプロジェクターは、投射光が少し上を向いています。全天投影用光学レンズシステムに水平に投射光を入れるには、プロジェクターのお尻をすこし持ち上げて固定させる必要があります。この調整は正直かなりシビアで面倒です。
しかしこのシリーズはデフォルトの投射方向が完全に0度(水平)。だから、水平に設置すればそのまままっすぐ光学レンズシステムに光を入れることができるのです。しかも、上下左右にかなり広く調整できるレンズシフト機能があり、ドーム上の投影位置をすばやく調節することもできます(しかも光学レンズシフトなので映像の劣化が少ない)
投影映像の品質はもちろんですが、実はこの水平投射&光学レンズシフト機能が採用の決め手になったといっても過言ではありません。
そして、約7㎏という重量、サイズ感、実売約20万円という価格も選定条件に収まる範囲です。すべての要求にバランスよく応えてくれ、しかも外せない機能がしっかり搭載されているので、この機種一択になったわけです。
最近ではもっと高輝度なレーザー光源プロジェクターなどと組み合わせてカスタムシステムを構築する機会も増えましたが、やはりみなさんにお届けする標準モデルは、明るさ、コントラスト、色再現性のバランスに優れ、使いやすいレンズシフト機能を持ち、サイズや価格も手ごろなこの機種を中心に製作していきたいと考えています。
ちなみに私はEPSONの関係者でもなんでもなく、このブログもステマではありませんよ。念のため(笑)