恐ろしい若気の至り

移動プラネタリウムのイベント出張上映では、エアドームの他に、プロジェクターやPC、映像音響機材など、さまざまな精密電子機器を使います。最近の機材の信頼性はとても高いですが、電子機器である以上、故障することもあり得ます。イベント現場では「機材が故障したので上映できません」は許されないので、万が一に備えて、できる限り予備機材を用意しておく必要があります。

しかし、少し前までの私は、それこそ今思い出しても背筋が凍るような、綱渡りみたいな出張上映をやってきました。
予備機材などもちろん持たず、自作投影機1台だけを担いで全国を回ってきたのです。収納ケースもテキトーなお手製段ボールで、運送中に破損することもしばしば。他の機材も、いつ壊れてもおかしくない安価なものをテキトーに揃えて使っていました。

以前使っていた完全自作のピンホール式プラネタリウム投影機


当時の私は「現場で機材が故障して上映ができなくなるかも」という危機意識がかなり薄かったと思います。
メイン投影機が完全自作だったので、現場で壊れても直せるし、最悪星空だけは必ず投影できる、という根拠のない自信もあったのでしょう。
まさに若気の至りというか、考え無しというか。
結果的に大事故や大失敗がなかったから良かったものの、そんな機材環境で20年近く、数百か所で数千回の投影を行ってきた30代40代の自分が本当に恐ろしいです(汗)

当時の投影機や操作ブース設置の様子。ドームは直径3mの小さなもの。

で、今はというと、とにかく不安で不安で仕方がない50代です(笑)
事業を続ければ続けるほど、実績を重ねれば重ねるほど、どんどん怖くなっていってる感じすらあります。
投影機材が高度にデジタル化し、現場での修理対応が難しくなっているのも一因かもしれません。

最近では、プロジェクターはもちろん、PCや映像音響機材、送風機、はてはケーブル類に至るまで、可能な限り予備機材を揃えて冗長性を確保しています。一人で対応できない場合は協力会社にバックアップを依頼しています。
そして「これが壊れたらこっちに置き替えてこう繋ぎ替えて…」みたなトラブルシミュレーションも常にやっています。予備機材やシミュレーションが現場で役に立つ機会はほぼゼロですが、ゼロ=いいことなので、無駄だろうが何だろうが準備は欠かせません、これががしっかりできていないと、イベント現場では本当に不安になります。

まあとにかく、本当に臆病者になりました。本来こちらが正常なのですが…。
でも、謙虚で臆病でいて間違いないと思うし、この怖い思いや不安の積み重ねこそがイベント対応力の向上につながってくれるのだと思っています。

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