教えない教え方 その1

これはもうずいぶん昔、とある自治体主催のパソコン教室で講師補助をした時のことです。
参加したおじいちゃんおばあちゃん達と和気あいあいで文書作成のお手伝いをしていたら、担当の自治体職員がなにやらご立腹で講師に文句を言っています。聞けば、
「あの補助の人(私)、ちゃんと教えてないじゃないですか。もっとまじめにしっかりやってもらわないと困ります」
とのこと。
その後、その職員は自ら各机を回り、
「違いますよ!こうです!ちゃんとテキストにも書いてあるじゃないですか!」
「もっと早く!もっと正確に!そんなんじゃ使いこなせませんよ!」
とやりだしたのです。時にキーボードやマウスを横取りしながら。
おじいちゃんおばあちゃん達はひたすら恐縮して「ごめんなさい」を連発していました。

それからこれはもっと昔、会社員として働いていた時のことです。
とある科学館施設に出張して打ち合わせを終えた後、せっかくだからという施設側のご厚意で、プラネタリウムの上映を見せてもらいました。
お客さんはたくさんのこどもたち。保育園の遠足でしょうか、水筒をぶら下げて楽しそうにドームに入ってきました。
しかし、投影は45分(長い)。内容は太陽系の惑星の話(難しい)。
次第にこどもたちは飽きて落ち着きがなくなり、ヒソヒソおしゃべりを始めました。
すると突然、解説をしていた担当者が、


「うるさい!静かにしなさい!話が聞けないなら出て行きなさい!」

とマイクごしに怒鳴ったのです。ドーム内が凍りつきました。
45分後、無口でドームを出るこどもたちや先生は、なにやら下を向いて神妙な表情でした。

あのおじいちゃんおばあちゃん達はパソコン触るのをあきらめちゃったんじゃないだろうか。
あのこどもたちは星のことを嫌いになっちゃったんじゃないだろうか。

この二つの出来事は今でも鮮明に覚えていて、「これが教えるってことなんだろうか?」と思ったものでした。

(その2に続く)

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