(教えない教え方 その1からの続きです)
プラネタリウムの出張上映事業を始めてからも、その出来事はずっと覚えています。
教えるってどういうことだろう。そもそも、この事業に教えるというスタンスが必要だろうか、と。
自治体が建設運営することが多い日本のプラネタリウム施設は、必然的に星や宇宙のことを勉強する場所というイメージが定着しています。小学校の理科の課外授業で行ったきり、という人が多いというのもわかる話です。
でも、商業施設を含めいろんなところへ出向いていく出張上映はそれに倣う必要はないし、むしろそのイメージは無い方がいい時すらあります。私がエアドームの中に座席を設けない理由や、「お話をしますけど、聞いてなくても寝ちゃってもいいですからね」と最初に言う理由もそこにあります。
Stars are always with you
これが、ウィルシステムデザインのプラネタリウム出張上映のコンセプトメッセージです。
もちろん、どんなイベント上映であっても、その日その場所で見える星や星座を知りたい、宇宙の話を聞きたいという要望には答えたいと思っています。最新の情報収集や勉強などの準備も必要です。ただ、そうやって得た知識や情報を詰め込みすぎず、押し付けすぎず、難しいことはいいから、まずはゆっくり星空を見上げてもらう場を作りたいと思うのです。それぞれの人生の折々にはいつも星が輝いていた、そんなことを感じてもらえるだけでもいいんじゃないかと思うのです。
こんなことを書くと叱られてしまいそうですが、私たち業界の中の人は、とかく自分の専門域はおもしろくて大きな意義があると思い、己の持つ情報や専門知識をたくさん話したがり、ともすると自己満足に陥りがちな一面があります。これはきっと、学者や専門家全体にも言えることでしょう。もちろん伝える熱意は必要ですが。
しかし、「わかっている人が、わかっていることを書いている文章はとてもつまらない」と言われます。1
謙虚に肝に銘じておかなければいけないメッセージだと思います。話すことについても同じです。
イベント上映で教えた知識なんて、きっと半分も残りません。むしろ、教えるというスタンスではなく、ちょっと非日常の空間と時間を楽しんでもらうくらいのスタンスがいいのかもしれません。その中で、見た人それぞれで何か感じることがあったか、心に残ることがあったか、もっと知りたいと思ったか、それが大事なんだろうって思います。
なので、もしウィルシステムデザインのプラネタリウム上映イベントを見かけたら、ぜひ気軽に参加してみてください。何も堅苦しいことはありません。
「うるさい!ちゃんと聞きなさい!学びなさい!」なんてことは言いませんので(笑)
- エッセイストのように生きる 松浦弥太郎著 より ↩︎