段ボールでプラネタリウムのドームを自作する

文化祭や学園祭、イベントなどで、プラネタリウムを自分たちの手で作って上映したいと思ったときに問題になる、ドームについてのお話です。
(2023年10月18日:より正確な計算方法を掲載し、全面的に加筆修正しました)

移動プラネタリウムではエアドームを使うのが主流になり、昔に比べれば製品も入手しやすくなりました。もちろん、ウィルシステムデザインが企画販売しているソラドームも使えます。ただ、購入でもレンタルでもけっこうな費用がかかるので、予算が限られている場合は導入が難しいかもしれません。
そこで今回は、「買えないなら作ろう!」です。段ボールでドームを作る方法を紹介しましょう。
手作りの上映イベントに向けてみんなでドームを設計製作するのも楽しいし、いい経験、勉強になること間違いなしです。

段ボールドームのパーツを自力で設計する

設計の考え方は簡単です。みかんの皮を張り合わせるようなイメージでパーツを作って貼り合わせていけばいいのです。その「みかんの皮」の形は、三角関数を使って寸法を計算することができます。

三角関数といえば、あのサイン・コサイン・タンジェントですね。
「こんなもん、将来何に使うの?何の役に立つの?」
誰もが数学の時間に一度は思ったことがある、あれです。
しかし、ついにそれが役に立つ瞬間がやってきたのです。さあ、数学の教科書を開きましょう(笑)

パーツ幅の計算資料図。上がドームを横から見た図で、下が高度角aでドームを輪切りにした断面を上から見た図

まずパーツ(みかんの皮)の幅を考えます。高度が0度(地平線)から90度(天頂)にいくにしたがって幅は細くなっていくのですが、各高度の幅はどのように計算すればいいでしょうか。

上の図をご覧ください。直径Rのドームを高度角a(ラジアン)で輪切りにしたとき、その断面の円の直径はRcos(a)で与えられます。円周はπRcos(a)です。これを分割数pで割ったπRcos(a)/pがパーツの幅(弧の長さ)となります。
ただ、実際に使うのは段ボールなので、厳密には平面で構成された(ドーム直径に内接する)多角形を作ることになります。幅=弧の長さとしてもドームは作れますが、弧ではなく弦の長さを幅にした方がより正確です。
ドームの直径R、分割数p、高度aのときのパーツの幅(弦の長さ)は
πRcos(a)sin(π/p)
で与えられます。これで各高度のパーツ幅が求められます。

一方、パーツの高さの方は簡単です。直径Rのドームであれば
πR/4
で求められます。高さ方向は段ボールを曲げながら張り合わせていくので、こちらは弧の長さでOKというわけです。

段ボールドーム設計支援ツールを使って一瞬でパーツを作図する

計算方法は上記の通りですが、三角関数を使って自力でパーツを設計するのは難しい!という人もいるでしょう。そこで止まってしまってドームを作れないというのも残念なので、そんなみなさんのために、段ボールドーム設計支援ツールを開発しました。

これはブラウザで動作するウェブアプリで、作りたいドームの直径と分割数を入力するだけでパーツの寸法表と図面を一瞬で表示してくれます。図面はSVGファイルとしてダウンロード可能で、これをドローソフトで開けば1/10スケールの型紙を印刷することもできますので、10倍に拡大すれば型紙の完成です。
ツールはオンラインストアでお求めいただけます。ぜひ活用してください。

ウィルシステムデザイン オンラインストア:段ボールドーム設計支援ツール
https://will-system.stores.jp/items/652f357f117e110029c43416

段ボールドームを作る

作るドームの直径と分割数を決めたら、上記の計算やツールで高さや各高度の幅を求めてパーツの型紙を作ります。その型紙から、分割数分のパーツを段ボールで作ります。実際には1パーツを1枚で作れるほど大きな段ボール板はないので、何枚かをつないで1パーツを作ることになります。
ここで一つ注意。
段ボールには折り曲げやすい目があります。目が横に走るようにパーツを切り出すと、貼り合わせる時、高さ方向にきれいに曲げることができます。

段ボールはスーパーなどでもらえれば無料ですが、大きなサイズできれいなものが大量に必要なので、しっかりした段ボール板を購入したほうがいいかもしれません。片面が白色の段ボール板A0サイズがセット販売されていますので、これを購入すればきれいなドームが制作できます。下に10枚セットと50枚セットの商品リンクを貼っておきます。

スーパーなどで段ボールをもらうときは、かならずお店の許可を得てからにしてください。できれば先生や指導者のかたに同行してもらうといいでしょう。くれぐれも勝手に持ち去るなどの迷惑行為はやめましょう。

作ったパーツを高さ方向に曲げながら、布テープやガムテープで1枚ずつ貼り合わせていきます。
最後にドームの天頂部分を塞いで完成。光漏れもていねいに塞ぐと、投影品質が良くなります。

完成した段ボールドームはこんな感じ。とある科学館のワークショップで小学生と一緒に作りました。外側には、みんなの手形スタンプをつけました。

ダンボールドーム外観
こどもたちと作った直径2.6mの段ボールドーム

四辺にテーブルや柱を置いてドームを乗せたり、土台部分も段ボールで作ったり、設置方法もいろいろ考えられます。そして部屋を暗くすれば、ちゃんとプラネタリウム投影できます。

実はこの作り方、基本的な考え方はエアドームも同じです。パーツが段ボールか遮光布生地かの違いだけです。
(布などの曲げられる素材で作るなら、パーツの幅=弧の長さで計算できることはもうおわかりですね!)
同じ方法で寸法計算して裁断したパーツ生地を縫製したり接着したりして、送風機で膨らませればエアドームになるのです。もちろん実際のエアドームでは、床部分や出入口、送風や排気部分などを作る必要がありますが、この方法でエアドームを自作している人もけっこういます。

最近では、ジオデシックドームやフラードームの自作パーツ販売や情報をまとめたサイトも多くあります。
いろいろ探してみて、ぜひプラネタリウムドームの自作にチャレンジしてみてください!

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