マイコン入門

この本を覚えている人はいったいどのくらいいるでしょうか。


NHK趣味講座「マイコン入門」のテキストです。放送されたのはたしか1982年ころ。
当時最新のマイコン(パソコンとは呼ばれていなかった)だったNECのPC-8001を使って、BASIC言語でいろいろなプログラムを作るという内容でした。
今じゃ考えられませんが、当時のマイコンは何のOSも搭載しておらず、電源を入れるとすぐにBASICのインタープリターが起動。何をさせるにしても、まずは真っ黒な画面にBASIC言語のコマンドを打ち込んでプログラムを書かなくてはいけなかったのです。
私たちの世代でこのマイコンの魅力にハマった人は、週末になるとデパートや電気屋の展示商品の前に陣取り、何時間も居座ってプログラムを打ち込んでいました。
店側もそういう坊主を追い出すこともなく、のどかな時代でした。誰もマイコンの使い方を知らなかったので、店員も他の見物客も興味津々で眺めていたものです。

その後初めて買ったマシンは、4MHz(GHzじゃない)動作の8ビットCPU、184KB(MBでもGBでもない)のメモリ、画面は640×400ドット、カラー8色というスペック。もちろんGPUなんてありません。
HDDもSSDもUSBメモリもCDやDVDも無く、カセットテープから何十分もかけてプログラムを読み込んでいました。今じゃ信じられない低スペックです。
それでも、自分のマシンを持ってからは勉強そっちのけでプログラムを打ち込む毎日。最初は雑誌に掲載されたソースを打ち込んで楽しむ程度でしたが、少しずつ自作プログラムも作ってBASIC言語を習得していきました。
パソコンのハードウェアスペックはそれから飛躍的に向上し、WindowsやmacOSなどのGUIを持ったOSも進化し、誰もが映像や音楽、そしてインターネットやSNSを楽しめるようになりました。
考えてみたら、まだ40年くらいしか経っていないわけですが、まさに隔世の感です。

最近、結構な量の天文計算(三角関数演算)を処理するプラネタリウム系アプリを開発する機会が多くあります。
毎秒60回、膨大な演算を繰り返して天体の動きをアニメーション描画させるようなウェブアプリです。
40年前なら1画面の描画に何分も何十分もかかったものが、今では1/60秒以内で余裕でできてしまう。
いまだに処理速度やメモリ容量の不足を心配してしまう昭和のマイコン脳には、もはや未来のマシーンにしか見えません(笑)

でも、当時習得したプログラミングのスキルは、今でも結構役に立っていたりします。
言語もフレームワークも格段に進化し、プログラミングスタイルもずいぶん変わりましたが、入力→処理→出力という流れ、繰り返しや条件分岐、配列操作といった処理やアルゴリズムの本質、基本は変わりません。
やりたいことをどうやってプログラムにするのか、貧弱なスペックだったからこそ創意工夫が必要でした。数学の教科書を片手に必死にソースを打ち込んだ経験は、今では得難いものです。きっとこれから先も活き続けると思います。

そんな私は、坊主だった40年前を懐かしく思い出しながら、今日もソースコードを打ち込んでいます。

この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!
目次