なぜドームじゃないと全天投影できないのか

「四角い部屋とか、ドーム以外の場所で空間全体に投影したい」
たまにいただくリクエストです。
実際にソラプロジェクターで四角い部屋に投影されて、
「映像が歪んだりピントが合わないところがあるんですが」
という連絡がくることもあります。

ソラプロジェクターはドームの半球に映像を全天投影できるシステムで、それに適した魚眼レンズを採用しています。これは導入のご相談をいただいたときにお伝えしている基本仕様で、原則としてドーム状の投影スクリーンが別途必要になります。四角い空間への全天投影は、前後左右上下の必要な投影面数分だけプロジェクターを配置して、分割投影するのが定石です。

では、なぜドームじゃないとだめなのか?
なぜドーム以外の空間だとうまくいかないのか?


それをあらためて説明しておこうと思います。
もちろん私の解釈なので厳密には間違っている部分があるかもしれませんが、参考になれば幸いです。

映像の歪み

下の図をご覧ください。これは、スクリーン面の各部がどちらを向いているかを青の矢印で示しています。
いわゆる「法線ベクトル」というやつです。


ドームでは、半球面のどの法線ベクトルも必ず半球の中心を向いています。
つまり、スクリーンのどの部分にも投射光は垂直に当たり、その結果歪みなく映像が投影されるということです。

四角い部屋では、各面で法線の向きが違いますし、投射光の当たる角度もまちまちです。
垂直に当たる場所は歪みなく投影できても、それ以外の場所では映像が変形して歪みが発生することがわかると思います。

ピントのずれ

下の図は、投射光の光路長(スクリーンまでの投射距離)を示しています。
ドームでは、中心から投射された光はすべて同じ投射距離(=半球の半径)でスクリーン面に当たります。
この投射距離でピントを合わせれば、全天どの部分にもピントが合うことになります。



四角い部屋では、各部で投射距離がまちまちです。
どれかの投射距離でピントを合わせても、別の距離の部分ではピントがずれてしまうことがわかると思います。

このように、スクリーンのすべての面が投射ポイントを向いていて、なおかつ投射ポイントからの距離がすべて同じである、という全天投影するための条件を満たしているのが、ドームの半球スクリーンなのです。
四角い部屋全体に投影した場合、場所によって大きな歪みやピントずれが起きるというのは、ソラプロジェクターの光学仕様上当然の現象というわけです。

ドーム以外の場所へ投影するときは、ソラプロジェクターの魚眼レンズを天井平面用に付け替えて対応しますが、この場合は天井面のみの一面投影に限られます。それでも通常の投影に比べれば大きなサイズの映像が得られますが、ドーム以外での正確な全天投影は根本的な光学仕様上できないということを、導入検討の前提として知っておいていただければと思います。

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